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X線は1日1千万枚超 | Mikbon’s Blog

 日本の病院はどこへ行ってもレントゲン写真は撮影できます。診療所(クリニック)でも撮影できる施設は多くあります。

 では、その撮影枚数はどの程度なのか調べてみました。




国民皆保険制度

 日本人が診療を受ける場合、そのほとんどが社会保険を使う『保険診療』です。

 反対に、保険を使わない診療を『自由診療』と呼びますが、美容整形や審美歯科、健康診断、予防接種などが該当します。健康診断とインフルエンザ予防接種だけでも1億回を超えますが、その比にならない回数の保険診療が行われています。




保険診療におけるレントゲン

 保険診療で行われたレントゲン撮影の内、保険点数を算定し診療報酬が支払われた回数を調べてみました。

 一般撮影などと呼ばれる、多くの方々が経験したことがあるような撮影の類いは以下のとおりでした。

診療行為算定回数
単純撮影(デジタル撮影)121,174,854
乳房撮影(一連につき)(デジタル撮影)2,328,061
造影剤使用撮影(デジタル撮影)1,263,560
単純撮影(アナログ撮影)1,089,985
特殊撮影(一連につき)(デジタル撮影)99,924
単純撮影(撮影)(手前2枚以上撮影)(デジタル撮影)25,594
造影剤使用撮影(アナログ撮影)25,535
スポット撮影(他方と同時併施)(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)22,171
単純間接撮影(デジタル撮影)12,621
乳房撮影(一連につき)(アナログ撮影)10,852
特殊撮影(他方と同時併施)(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)8,484
特殊撮影(一連につき)(アナログ撮影)7,280
児頭骨盤不均衡特殊撮影(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)6,999
特殊撮影(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)6,110
造影剤使用間接撮影(デジタル撮影)4,706
断層撮影(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)3,542
手術前医学管理料による2枚以上撮影3,311
スポット撮影(他方と同時併施)(診断・撮影)(一連につき)(アナログ撮影)2,544
副鼻腔曲面断層撮影(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)2,428
断層撮影(他方と同時併施)(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)2,346
パントモグラフィー(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)1,966
単純撮影(撮影)(短手2枚以上撮影)(デジタル撮影)1,924
胆管・膵管造影(胃・十二指腸ファイバースコピー)(一連につき)(画像診断)1,194
回転横断撮影(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)964
スポット撮影(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)737
児頭骨盤不均衡特殊撮影(他方と同時併施)(診断・撮影)(一連につき)(デジタル撮影)727
椎間板造影(撮影)(デジタル撮影)611
造影剤使用間接撮影(アナログ撮影)583
エックス線フィルムサブトラクション(一連につき)(デジタル撮影)367
心臓及び冠動脈造影(左心カテーテル)(一連につき)244
心臓及び冠動脈造影(右心カテーテル)(一連につき)197
児頭骨盤不均衡特殊撮影(診断・撮影)(一連につき)(アナログ撮影)123
特殊撮影(他方と同時併施)(診断・撮影)(一連につき)(アナログ撮影)59
特殊撮影(他方と同時併施)(診断・撮影)(一連につき)(3歳未満の乳幼児)(デジタル撮影)42

 少し大型の装置であるCTの算定回数は下表のとおりでした。

診療行為算定回数
CT撮影(16列以上64列未満のマルチスライス型の機器による場合)(一連につき)17,558,966
CT撮影(64列以上のマルチスライス型の機器)(その他の場合)(一連につき)12,744,883
CT撮影(4列以上16列未満のマルチスライス型の機器による場合)(一連につき)499,960
CT撮影(64列以上のマルチスライス型の機器)(共同利用施設において行われる場合)(一連につき)428,189
CT撮影(イ、ロ又はハ以外の場合)(一連につき)395,017
CT撮影(16列以上64列未満のマルチスライス型の機器による場合)(一連につき)頭部外傷11,788
CT撮影(64列以上のマルチスライス型の機器)(その他の場合)(一連につき)頭部外傷6,537
脳槽CT撮影(造影を含む。)(一連につき)374
CT撮影(4列以上16列未満のマルチスライス型の機器による場合)(一連につき)頭部外傷309
CT撮影(イ、ロ又はハ以外の場合)(一連につき)頭部外傷244
CT撮影(64列以上のマルチスライス型の機器)(共同利用施設において行われる場合)(一連につき)頭部外傷83




年間1億5千万回

 一般撮影が1億2,611万645回、CT撮影が3,164万6,350回でした。合わせると1億5千万回以上の撮影が行われていることになります。

 157,756,995回を365日で割ると432,210回/日、月~金の5日だけ稼働とした場合には605,096回/日となります。

 仮に全員が4カ月に1回の定期撮影をしている患者であったとして、ユニーク数は5,258万人になります。少なくとも5,000万人がレントゲン撮影を受けているのかもしれません。




1日1千万枚超

 一般撮影では1回の撮影で1枚ということも多いですが、CTは数百枚~数千枚のレントゲン画像を撮影します。

 CT撮影3,164万6,350回、毎回100枚としても32億枚ほどになります。

 10cm分を1mm間隔で撮影しても100枚です。胸部CTでも腹部CTでも対象部位は10cmでは収まらないので、軽く100枚を超えてくることは容易に想像できます。

 1日平均1千万枚は超えそうです。




自由診療

 自由診療の世界でもレントゲン撮影が行われています。

 下表は『令和4年度都道府県別特定健診受診率』です。全国で5,192万人の対象者が居り、3,002万人の受診者、受診率は57.8%です。

 こちらはユニーク数が3千万人と考えて差し支えないと思います。

都道府県対象者数受診者数受診率
北海道2,262,410 1,053,65746.6%
青森県571,057298,26452.2%
岩手県537,013313,53358.4%
宮城県974,418607,84262.4%
秋田県439,598234,94253.4%
山形県459,729310,41767.5%
福島県817,894461,54356.4%
茨城県1,237,894685,62455.4%
栃木県 814,938481,19759.0%
群馬県831,648465,20955.9%
埼玉県3,000,4071,742,26758.1%
千葉県2,596,384 1,473,882 56.8%
東京都5,071,9553,699,41272.9%
神奈川県3,766,4712,188,68858.1%
新潟県963,930601,15862.4%
富山県453,807287,45063.3%
石川県488,400291,32359.6%
福井県327,336186,82657.1%
山梨県352,238214,68060.9%
長野県862,107536,03062.2%
岐阜県850,442489,44057.6%
静岡県1,544,424914,75759.2%
愛知県2,972,8501,830,53261.6%
三重県730,213448,65761.4%
滋賀県582,032346,87859.6%
京都府1,023,171572,18655.9%
大阪府3,544,8161,928,51754.4%
兵庫県2,258,3491,225,18254.3%
奈良県571,978285,70850.0%
和歌山県406,652198,24648.8%
鳥取県237,354126,35253.2%
島根県281,965165,02958.5%
岡山県769,492425,52955.3%
広島県1,155,991619,89253.6%
山口県574,589294,34251.2%
徳島県315,586165,64952.5%
香川県412,814228,06655.2%
愛媛県586,715 305,99552.2%
高知県302,307162,27853.7%
福岡県2,105,8021,118,47553.1%
佐賀県341,426184,53854.0%
長崎県565,093280,66449.7%
熊本県735,107396,71554.0%
大分県481,930266,94355.4%
宮崎県464,460242,12752.1%
鹿児島県685,310355,70451.9%
沖縄県594,125304,14651.2%

 特定健診と並行して常勤労働者に対して行われている事業者健診は労働安全衛生法に基づき実施されています。妊婦など撮影できない人を除き胸部レントゲン撮影(胸部エックス線検査)が行われます。

 労働安全衛生法に基づく胸部エックス線検査の歴史は古く、50年以上実施されています。

(定期健康診断)
第四十四条 事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一 既往歴及び業務歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
四 胸部エックス線検査及び喀痰かくたん検査
五 血圧の測定
六 貧血検査
七 肝機能検査
八 血中脂質検査
九 血糖検査
十 尿検査
十一 心電図検査

労働安全衛生規則

 労働安全衛生規則では胸部エックス線検査を省略できる者として40歳未満であり、感染症法やじん肺法の該当者ではなく、また年齢が20歳・25歳・30歳・35歳でない者とされています。

 すなわち、20歳、25歳、30歳、30歳の者、および40歳以上の者は全員が胸部エックス線検査を受ける義務があります。医療従事者も受診義務があります。




レントゲンから生体情報

 レントゲン画像に潜在している生体情報を引出すことが弊社のシーズです。

 先述の数千万人のレントゲン画像は、このシーズを活用するリソースとして重要になります。

 骨粗鬆症は40歳代から50歳代でも兆候があると考えられ、60歳代になると女性の5人に1人は骨粗鬆症であるといわれています。70歳代では3人に1人、80歳代では2人に1人と有病率が高まります。

 40歳以上が受ける特定健診で骨の状態を把握できるようになれば、骨粗鬆症への早期介入ができるようになり、高齢者の骨粗鬆症患者が減り、骨折リスクも減ると考えられます。




わずかな被曝も有効活用

 レントゲン撮影は健康に害はない程度に被曝しますが、その被曝もゼロリスクではありません。

 肺の状態が正常であるかということだけ知るために撮影することもできますが、その撮影画像から他の健康状態も知り得るのであれば、被曝リスクから得られるベネフィットが拡大します。

 『コスパ』が重要視される時代、1度の撮影でいくつもの生体情報が得られる検査は、国民のニーズに合致しているかもしれません。

 協会けんぽから届いた資料には『骨粗鬆症検診の補助がはじまりました!』といった文言がありました。わざわざ検査装置がある施設へ行き、検査の時間を割いて受けるよりも、どうせ撮らなければならない胸部エックス線検査で骨粗鬆症検診も済ますことができたら、コスパが良いかなと思います。
 さらに、補助してもらえる『1回800円』以下で検査ができれば、受診者の自己負担はゼロ円ですので、そうなれば『受けたくない人は申し出てください』という方向に変わるかもしれません。